野良犬。故郷に帰る。

煮え湯を飲まされ、辛酸を舐め、砂を噛むような思いをしても、故郷に帰る夢は諦めない。

お前は貧乏人 1

「お前は貧乏人」


この言葉は

私が25歳で小さいながらも

一軒目の建売の家を買う頃までは

三者が私を蔑む時に使う常套句だった。


今でも脳裏には

私を虐げ、蔑み 

冷たい視線を浴びせた様々な人の声を借り

この言葉がリフレインと

なって夢の中に響き続け

真夜中に突然目を覚ます時がある。



後頭部から滴る汗。

獣の様に激しい呼吸。


鋼のように強く握り締めた両拳。

寝室の暗闇の中


不安に駆られた視線が

何かを求めて漂う。



傍で静かな寝息を立てる

家内と娘を顔を見つけて

ようやく、夢との狭間から

現実に戻る。





1980年 4月5日

私の人生の目標が楔のように

心に打ち込まれた日。


目標を達成しようとすればするほど

禍を起こした悪魔が

私の気持ちを焼き払おうとするように

この心無い言葉を誰かの口を借りて

今でも夢の中で私に吐きつけるのだ。




「お前は貧乏人」


「お前は貧乏人」


「お前は貧乏人」

「お前は貧乏人」



「お前は貧乏人」


「お前は貧乏人」


「お前は貧乏人」


「お前は貧乏人」


「お前は貧乏人」


「お前は貧乏人」


「お前は貧乏人」


「お前は貧乏人」



「お前は貧乏人」



「お前は貧乏人」と。


40年前の悪夢は

まだ終わってはいない。