野良犬。故郷に帰る。

煮え湯を飲まされ、辛酸を舐め、砂を噛むような思いをしても、故郷に帰る夢は諦めない。

2019-07-14から1日間の記事一覧

「副お父さん」5

「お前達に大事な話がある。 良く聞いてほしい...。」 3月24日に突然中野のおじちゃんの家に行って以来、何が起こっているのか全く知らされていない私達姉弟は、 父の前に正座して、言葉の続きを待つ。 状況を具に聞いてはいなかったが何かとてつも無い事が…

「副お父さん」4

「...。よく帰ったな。 中野の皆は優しくしてくれたか...?」久しぶりに聞く父の声だった。父は3階リビングの隣にある和室に座っていた。母も父の隣に座る。私と姉は呆然としていた。久しぶりの自宅は変わり果てていた。一階の工場だけではなく2階も3階も、何…

「副お父さん」3

12日振りの自宅が近づくにつれて私は何処かいつもと違う自宅の雰囲気を感じ取り、走るスピードを緩めた。当時は土曜日も通常通り働く事が当然だったのだが物心ついた時から聞き慣れている印刷機が動いてる音がしないのだ。私の走るスピードは落ち続け、自宅…

「副お父さん」2

1980年4月5日 土曜日。母が私達姉弟を迎えにくる日の 朝を迎えた。3月24日から12日間、母の顔を見ていなかっただけなのに母と対面するのに、僅かな緊張があった事を覚えている。当時、土曜日は皆仕事をしていた。中野のおじちゃんが出勤した後、私達姉弟は、…

「副お父さん」1

「お前は男だからな...。 家や、お父さんに何かあったら お前は命をかけて お母さんとお姉ちゃん、 そして家を守るんだぞ...。 お前はこの家の副お父さんだ...。 その事には理由なんて無いんだ。」今日の男女平等の観点からしたら時代錯誤も甚だしい言葉であ…