野良犬。故郷に帰る。

煮え湯を飲まされ、辛酸を舐め、砂を噛むような思いをしても、故郷に帰る夢は諦めない。

2019-06-14から1日間の記事一覧

その日 何が起きていたのか 7

一階の工場に降り 工場のドアを開ける。 当時三台あった印刷機が激しい音を立てて回っている。 父は従業員に向かって軽く手を上げる。 起業以来続いている、作業を一時中断する合図だ。 父の元に集まってくる従業員に話す。 「今やっている仕事は、3日で終…

その日 何が起きていたのか 6

階段を上り、2階の事務所に入る。 さっき法務局に向かって飛び出したまま、書類が散乱している。 父は電話を取る。 日ごろから発注を頂いているお客様に電話をする。 「詳細は落ち着いたら、必ず話します。大変なご迷惑をおかけいたしますが、 現在お請けし…

その日 何が起きていたのか 5

父は法務局からの道を、自宅に向けてゆっくりと歩いていた。 もう走らないし、走る必要性も感じない。 頭の中は混乱し、足取りは重い。 会社の預金は全ておろされ、 自宅は売却されている。 ふと、会社にある現金を会社が持つ3つの金融機関の口座に分けて振…